変わった構成で作られた小説③

2つの読み方が特徴的

読み手によって好きな読み方が実現するとして、変わった構成で作られた小説の一つとされる「石蹴り遊び」は、アルゼンチンの作家であるフリオ・コルタサルが書いた長編小説です。
コルタサルが書いた小説の中には映画化されたものも存在しており、世界的に有名な作家へと成長を遂げるきっかけにもなりました。
本作は1963年に発表されたもので面白い読み方が楽しめるとして注目されました。

参考:『石蹴り遊び』フリオ・コルタサル

2種類の読み方とは

大きな特徴といえるのが2通りの読み方ができる構成になっている点にあります。まずは第一部と第二部を順番に読んでいくという至ってオーソドックスな読み方です。
もう一つが作者の指示に従って全ての章を行ったり来たりという方法で読んでいく方法になります。
どちらの読み方も面白く、読者からは作者の指示に従う読み方がおすすめされることが多いですが、長編作品のため紙の本を二冊も持ち歩くのは不便なので外出時は不向きです。
出先で読書をしたいという場合には従来通りの読み方をおすすめします。

ゆっくりと読書の時間を設けることができる場合には、作者の指示に沿ってあちこちを読み進める方法をおすすめします。
物語は一体どこで終るのだろうか?と不安に感じるほど先が見えないストーリー展開になるものですが、かなり面白い作品に仕上がっています。

物語は第一部から第三部という構成に分かれています。
一部では1章から36章までが含まれている「向こう側から」というパリを舞台にした内容になっています。
二部には37章から56章まで含まれており、「こちら側から」としてブエノスアイレスを舞台にした内容になります。
三部では57章から155章という長い「こちら側から」という内容が含まれます。
一部から三部までを通して読み進めた場合には破滅型といえる青春小説という世界観になります。

作者の指示どおりに読み進めていくと、最後の方に何度も反復する読み方が出てくるなど変わった構成になっていると感じられますが、物語の内容に入り込んでいると面倒だなと感じることもないほど夢中になって読み進めることができる面白さがあります。

大まかなあらすじ

あまり本の内容をネタバレするとせっかくの面白さが半減するので、大まかなあらすじだけをご紹介します。
ブエノスアイレス出身のオリベイラは将来作家になりたいと考えている人物ですが、現実は酒に溺れてジャズに酔っているというボヘミアン体質でした。
オリベイラの前に現れたウルグアイ出身のルシアは、子供がいながらにして娼婦をしているという人物で、二人はやがて恋に落ちます。
しかし突然姿を消してしまったルシアを探し求めてパリの街をさまよっているオリベイラにどんな物語が待ち受けるのかは…本編をゆっくりとお楽しみください。

変わった構成で作られた小説②

表と裏の物語

世界中には変わった構成で作られた小説がたくさんあります。
普通の小説では読み飽きてしまったという方におすすめの一冊が、「風の裏側」という本です。
副題としてヘーローとレアンドロスの物語とされていることからもわかるように、二人の登場人物が主人公になっています。
ここまでは普通の小説と変わりないですが、変わった構成とされているのは造本の仕方にあります。

本の真ん中にあるページが境になっていて、それぞれの物語が逆さまになって印刷されているのです。
表と裏の物語のどちらから読んでも良いですが、それぞれの物語が組み合わさるとどんな展開が待ち受けているのか…が楽しみな展開と言えます。
著者はセルビア人の小説家であるミロラド・パヴィチで、彼は通常の小説とは異なる作品を発表しているのが特徴です。
最初から最後まで通して読むという従来の構成ではない作品ばかりであることが面白いです。

参考:時の海を渡って  ミロラド・パヴィチ『風の裏側』

二人の主人公について

物語の中心人物となるのが、17世紀の石工だったレアンドロスという青年と、現在の女子大生であるヘーローです。
どちらから読むにもお好みですが、まずはレアンドロスの物語のあらすじをご紹介します。

レアンドロスが生きていた頃は各地で戦争が頻発していたことで運命に翻弄される人生を歩んでいました。
先祖代々石工として生きていきた家系に生まれたことで石工技術を身につけたレアンドロスでしたが、運命に導かれるようにして楽器奏者や商人へと変わって冒険を繰り広げていくという物語になっています。

一方、現代の女子大生であるヘーローの物語は、少し人と変わっている性格で不思議な日常生活が描かれています。
家庭教師をしている家で不思議な体験をすることになります。
本当は二人の子供に指導するはずだったのに、いつも勉強をしに来るのは一人だけなので、もう一人はどこへ行ってしまったのか…という謎が残ります。

実はこの物語の主人公二人は、古代ギリシア神話に登場するレアンドロスとヘーローが生まれ変わったという設定になっています。
古代ギリシア神話では海峡を隔てた場所に住んでいた二人ですが、毎晩彼女のヘーローに会うためにレアンドロスが海峡を泳いで渡っていたとされています。
しかし、ある時冬の嵐に巻き込まれてレアンドロスは溺死するという事態になり、ヘーローも後を追うようにして海に身を投げたという悲恋物語が元になっているそうです。

小説に登場する二人は海峡ではなく、時代に隔てられる形で生まれ変わっていますが、この二人がどのように再会することになるのか…が見どころといえます。
本の真ん中で物語を分けている水色の紙が実は古代ギリシア神話に登場する海峡をイメージしていると考えられます。

変わった構成で作られた小説

本が間違っている?と思わせる構成

変わった構成で作られた小説の一つとしてご紹介したいのが「アイコレクター」というフィツェック・セバスチャンというドイツの作家さんが書いた小説です。
著者はドイツでは有名なベストセラーを記録している有名作家で、治療島やラジオ・キラーなどの話題になった作品を数多く輩出しています。
本作は通常の書籍とは異なる構成になっているため、ひょっとしたら製本の際に間違いがあったのではないかと思えてきます。
これは本の内容に通じることなので、決して製本が間違っていたわけではありません。

参考:アイコレクター

編集部からの注意書き

本を手に取ると、編集部からの注意書きとして、この本は章立てとノンブルが逆になっていると記載されています。
ちなみにノンブルとは本のページ数を示す数字のことです。
通常の本なら表紙から見て1ページ、2ページ…と進んでいくものですが、この本に関しては表紙を開くといきなりエピローグつまり小説の終わり部分から始まって、最後の405ページからノンブルが開始されていくという仕様になっています。

思わず表紙と裏表紙が逆なのかな?と思えてきて、本を読んでいないうちから出版社に製本が間違っているとクレームを入れたくなってしまいますが、実はこれがこの本の大きな狙いになっています。
物語も時系列が逆になっているというものではないので、通常の本と同じように読み進めていきましょう。
最後まで読み終えた時に、このような珍しい構成になっている理由が見えてくるはずです。

あらすじ

物語の中心になるのは、ベルリンの誰もが震撼するような連続殺人事件です。
まず子供を誘拐して母親を殺害、犯人が設定した制限時間内に父親が探しだすことに成功しなければ子供も殺害するという連続殺人事件が発生していました。
しかも、殺害された子供の目がえぐり取られた状態になっていたことから、犯人のことをアイコレクター・目の収集人と呼んでいました。

元はベルリン警察で勤務していた主人公のツォルバッハは交渉人としいう役割がありました。
交渉人として勤務していた際に犯人の女性をやむを得なく殺害してしまったことを悔やみ警察を辞めて新聞記者に転身していました。
そんな主人公の前にアイコレクターが現れて、罠にかかって容疑者に仕立てあげられてしまいます。

透視能力がある盲目の女性に助けられて調査を進めて、新たな犠牲者になりかけている子供を救おうと奮闘しますが、更に主人公とアイコレクターの繋がりが明らかになってきてハラハラする展開が待ち受けています。
物語の結末がどうなったのかを想像してみると、エピローグで語られている暗い印象が結末を物語っているような気がします。
物語の前半はわけのわからないうちに進行していくような印象を受けますが、後半になるにつれて時間を忘れるほど夢中になるはずです。